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虚無感に似た焦りがこわい/ブラックボックス@砂川文次 [読んだ漫画/本/雑誌の感想]



あらすじ


ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。

自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車便メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。

昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。

気鋭の実力派作家、新境地の傑作。

何を目指していくべきかもわからない


ただでさえ先が見えない中のコロナ禍。

流動的な仕事でさえ減っていく焦り。
「ちゃんとしなきゃいけない」プレッシャーからの焦り。

でも「ちゃんと」って具体的に何?
わからないゆえの焦り。

けれど誰にも聞けないプライドの高さだけはある男の話です。

その焦りを勉強や就活に向かえればいいのですがそんなやる気もないサクマ。
手が出ちゃう暴力衝動を持っています。

私も正体がわからない「焦り」をNOWで感じているのでわかります。
その焦りを悟らせたくないかっこつけたい。そんな謎のプライドも。

高度成長期のように「ただ稼げばいい」みたいなのもないですしね。

自分のなかを見つめるしかない


結局、「答えっぽい何か」は自分のなかにしかないのかもしれない。
暴力沙汰を起こし刑務所に行くことになったサクマは気づきます。

内面を嫌がおうでも見つめ続けるしかない刑務所で自分の得意を見つけます。

自分とは付き合わざるおえないのだからケツ持ちは自身しかできない。
そのケツ持ちの方法は「お金を稼げる何か」ではなく「時間を忘れられる何か」でいいのかもしれません。

それにしても刑務所の描写、やけに詳しいですよね。
作者、経験したか刑務官として働いてる・・・?


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行動することは一つだけではない/三十の反撃@ソンウォンピョン [読んだ漫画/本/雑誌の感想]



あらすじ


非正規社員の三十歳、キム・ジヘ。
平凡な彼女は、世の中にも会社にも期待することを諦めていた。
だが、一癖ある同僚との出会いをきっかけに、社会に小さな反撃を始めるようになったジヘは、次第に自らを見つめ直し、自分らしい生き方を模索するように――。

行動にも種類がある


ジヘたちのいたずらは稚拙で衝撃的なものではありません。
その行動は一見世の中を変える一歩のようでいて本当に「いたずら」の域を超えません。

それでも若い人にとっては「世の中のための行動」のように思えるんですよね。
そしてそういう事をしない人は弱虫。

何となくわかります。

でも30にもなると熱い思いだけでは生きていけなくなる。
あまりにもしがらみや他人に思いをはせる理由が多くなりすぎる。

かといって行動することはできる。
自分の思うこと願うこと、よりよい方向に行動する。

そしてより良い方向に向かって行ってくれそうな人に期待する。

それもしっかり行動していることになるのかな・・・。




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このカップル、かわいすぎーーー!?/オールドファッションカップケーキ [読んだ漫画/本/雑誌の感想]



あらすじ


寝て、起きて、仕事をする──それだけの毎日、それだけを好きで選んでいる自分に最近少し憂鬱な39歳・野末。
ちょっと無愛想だけど信頼厚い部下29歳・外川は、そんな野末が気になる。ひょんなことから、女子で賑わうパンケーキのお店に2人で行くことに。
ここから、外川による野末のためのアンチエイジング大作戦が始まった。
休日まで野末のために時間を割く外川に「なぜ?」が募っていく野末だが…!?

静かな時間で読みたくなる


全体的な雰囲気が「静かな雨」って感じ。
緩急は全然なくってシトシト系の雨です。

読書メーターで「小説みたい」って書いてあって本当にその通りです。

人間関係って意外と激しく動かない場合もあるからリアルでした。

萌えポイント


合コンでモテる野末に嫉妬しすぎて悪酔いする外川がめっちゃ可愛かったです。
そういうのわかっているから余計にくだまいてるのもいいなーww

不器用系わんこ好きです♪

そんでどんなアタックにも初恋みたいな反応する40男、野末も好き♡


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私にとってはテンプレ通りが楽しいです/自分サイズでいこう@hara [読んだ漫画/本/雑誌の感想]



あらすじ


「痩せてなくっちゃ、オシャレをしちゃいけない」と思っていた私へ。
ボディポジティブ=「ありのままの自分の体を愛してもいいかもよ?」という提案。
プラスサイズの女の子のイラストで人気のイラストレーターharaさん初のコミックエッセイです。

好きな自分=???

「キレイな人」といえば脚や腕が細く、痩せていて・・・って感じですよね。 そういうこれまでのイメージに「必ずしもそれが幸せではないのでは?」という本です。 いわゆるテンプレなキレイになったら幸せになれる。 でもそのために心の調子を崩したり体を壊したり・・・。 それって意味ないんじゃないの? そこまで無理するくらいなら無理なダイエットも体型維持もやめます! となったのが著者のharaさん。 確かに愛する、愛されるためにしたことで元気になれないんだったらやめたほうがいいかもなあ。 でも逆に私は痩せてよかったと思っています。 すくなくとも巨デブよりの小太りより人生楽しめています。 多分、haraさんと逆の体型が私の「自分サイズ」なんだと思います。 それもそれで許して欲しい。


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私は私として生きていく/政略結婚@高殿円 [読んだ漫画/本/雑誌の感想]



あらすじ


江戸末期・明治大正・昭和、百二十年の間に女性の生き方はこう変わった!

金沢城で生まれた私の結婚相手はわずか生後半年で決まった。(中略)
早すぎると思うかも知れないが、当時ではごくごく当たり前のことで、
大名の子の結婚はすべて政略結婚、
祝言の日まで互いに顔を合わせず、文も交わさぬのが慣習である。
私の生まれた文化の世とはそういう時代であった。――第一章「てんさいの君」より

不思議な縁(えにし)でつながる、三つの時代を生き抜いた三人の女性たち。
聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らを三部構成でドラマチックに描き出した壮大な大河ロマン!

女性も体をはった


時代は違えど女性も体を張り、息切れしながらも生き抜いたんだと思える一冊でした。

いつの時代も体力があり体が大きい男性が「体を張っている」と思われがち。

女性も「お家を続かせる」、「衆目にさらされ続ける」、「伝統を続ける器にされる」というものがあります。
それが女性にとっての「体を張っている」なんですよね。

華族からも家族からも


最後だからということもあるかもしれませんが、第三章の「華族女優」が印象的でした。

彼女は家族にも華族にもしばられていました。

でも段々と時代を経るごとにその足かせ手かせから外れていくのが泣ける。
比較するように母親と祖父は華族に蝕まれていくようでした。

呪いをかけているようで自身にかかっていく母。
段々、女優として売れていき自立した女性になって呪いから解けていくかの子。

何だかその対比が哀しくも美しいんですよね・・・。


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