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お探し物は図書室まで/人生は深追いするものじゃない [読んだ漫画/本/雑誌の感想]

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お探し物は図書室まで / 青山美智子




あらすじ


お探し物は、本ですか?仕事ですか?人生ですか?
悩める人々が立ち寄った小さな図書室。
不愛想だけど聞き上手な司書さんが思いもよらない選書と可愛い付録で人生を後押しします。
『木曜日にはココアを』の著者が贈る、明日への活力が満ちていくハートウォーミング小説。


人生には節目がある


生きていたら年度末や年度初めみたいな節目がありますよね。

大きく言うと受験、就職(仕事)、結婚、出産(子育て)、退職でしょうか?

その中でも就職と子育てと退職、そしてやりたいことと仕事の両立の4つに焦点を当てています。

誰でも行き当たりやすい悩みを小さなコミュニティハウスの図書室司書の小町さんが寄り添ってくれる。
道しるべではなく寄り添い否定しない、という内容です。

印象にのこった言葉


5章の老後の生き方に悩む正雄にかけられた言葉が印象的でした。

やるべきことがあり1日の過ごし方に悩まなかった正雄。
だから暇のつぶしかたや趣味に出会う努力をしなかったが故に困ります。

自分が「独り」になってしまったようで喪失感をおぼえます。

焦りから試行錯誤を繰り返すなか、管理人の海老川さんの言葉にハッとします。

「人と人が関わった時点で社会とつながっている」

様々な職をまわった人だからこその言葉でした。
止まらなかったからこそ様々な人と出会いかかわっていったのでしょう。

「社会貢献」なんて肩ひじ張らなくてもいい。
一貫性がなくてもいい。

人と話したり何かをしたりしていることで影響を受けたり与えたりする。
その影響自体が「社会貢献」なのかもしれません。

人生は背伸びするものじゃない


私も社会の役に立ちたいけれどそんな能力がない・・・と落ち込むことが多い人間です。

考えて色んなものを選択し続けていれば十分なんだと思えました。
例えあっちこっちに行っていてもです。

やりたいことやできることが終着点がやがて見つかればいいな、くらいのゆるさ。
そういうカジュアルさでいいのかもしれません。


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滅びの前のシャングリラ/死に違いはありますか? [読んだ漫画/本/雑誌の感想]

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あらすじ


「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。
そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。圧巻のラストに息を呑む。
滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。



人間の本性


隕石が来るのが1か月後というのがキモ。
即死にしてくれず生殺しで真綿にくるまれて首を絞められるにはちょうどいいですよね。

だからこそ本当の人間性がでる。
そしていかなる法律もしょせんは戦争を含めた「平時」の産物。

超自然的で「人類」ではどうしようもないものの前では無意味だと表現されています。

だから短期間で世紀末になっていきます。
ある人は病み、ある人はただただ嘆き、ある人は精神的に成熟していき欲しかったものを手に入れていく・・・。

小惑星衝突というものはありえる話です。
いくら専門家が直近の確立は低いとは言っても宇宙の話だからわからないし。

誰でも持っている根源的で普遍的な恐怖を描いた面白い話でした。

すべての死は一緒


床の間で人に囲まれながら死ぬことと衝突で死ぬことって結局一緒なのかな、って思いました。

死は不変で平等です。
平時の今は寿命や事故などでそれぞれ時期が違うだけ。

それまでに自分はどれだけしたいことをしたか、手に入れることをできたか。
違うのはそれくらい。

人生の意味なんてなくていいから流星の一瞬の輝きのようなものを手に入れたいな、って思えました。
少なくともLocoと友樹たちは心の負の側面を埋められる輝きを手にいられたんじゃないかな?




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人間は執着心を捨てられない 心淋し川/西條 奈加 [読んだ漫画/本/雑誌の感想]

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あらすじ


不美人な妾ばかりを囲う六兵衛。その一人、先行きに不安を覚えていたりきは、六兵衛が持ち込んだ張形に、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして…(「閨仏」)。飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。それは、かつて手酷く捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。もしや己の子ではと声をかけるが―(「はじめましょ」)他、全六編。生きる喜びと哀しみが織りなす、渾身の時代小説。




直木賞受賞作ということで読みたくなりました。

図書館で借りましたがさすが予約数がすごい。
待っているだけでも時間がかかりました。

いつか私も・・・


私は特に4つ目の冬虫夏草が気になりました。

薬問屋に嫁入りしのちに娘が姑や産んだ息子、息子嫁に振り回される話です。
言い方を悪くすれば息子に執着し続けそれを幸せだと思っている母親が主人公です。

私もいずれは母親になる(かもしれない)からかもしれません。

だから余計に
「子どもと口にする親ほど、存外、子供のことなぞ考えていないのかもしれんな」
という言葉が印象的でした。

母は息子を一個人とは考えていませんでした。
母親として関わりたい時に姑に邪魔されたことで執着していたからです。

仏教では「三毒」という言葉があります。
貪欲、瞋恚(しんに)、愚痴というのだそうです。

母は思い通りにしたいという思い、けれども何も思い通りにならない息子や周囲に「ただ」怒り、行動を起こさず愚痴る。

そしてようやく思い通りになった大の息子を手放さない。
まさに息子の心を理解せず自己的な行動ばかりです。

今の時代でもありそうですよね。
姑問題や頼りにならない夫、今を楽しむばかりの子供・・・。

その場によどみ続ける川とは言いえて妙です。

執着


考えてみたらどの話も執着心も関わっている気がします。
しかも今も通じる普遍的なものです。

人間は前にも後ろにも行くものではない執着心のある存在なのかもしれません。

執着にとらわれて100%心に占められてしまうことなく、それはそれこれはこれと別の箱にしまう。
そうすることで少しは動けるようになるのかな?


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