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宅間守はモンスターではなくアヴェンジャーだった? [読んだ漫画/本/雑誌の感想]

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附属池田小事件の宅間守について読みたくて図書館で借りました。


・附属池田小事件の被害少女がのこした「希望」
https://mi--ma.blog.ss-blog.jp/2021-06-23

犯罪加害者と面会し、対話したり生い立ちを紐解いていって理解しようとしている臨床心理士が著者です。
ある種の「不幸な生い立ち」に生まれ育ってしまった元子どもに同情的かな、とは思いました。

が、前回読んだ本とは違った視点を得られました。

絶対的な「身内」がいなかった


両親についてはやはり父親は暴力的だったようです。
言葉尻がきつかっただけではありませんでした。

母親についてはそんな表現はありません。
「よう離婚せえへん(守談」」という言葉を発していることから彼女もDVされていたのでしょう。

でもおそらく守は彼女からはモラハラは受けていたのではないでしょうか?
「生まれてこなければよかったんや」「父親が頼んだから仕方なく産んだ」とか・・・。

著者の長谷川博一さんもそのような印象を受けたのかな?という文章を書いています。

安心できる牙城たる存在に恵まれなかった不幸は確かにあります。


個にも子にもなれなかった


この本ではじめて知った言葉があります。

「子どもたちには何の罪もない。自分が子供の立場やったら無念やったろうなぁ」
「初めて言うけどなほんまはな、途中で、もうやったらいかん、やめないかん思って、そやけど勢いがあって止まらんかった。途中で誰かから羽交い絞めされたとき、やっとこれで終われるぅて、ほっとしたんや」

他にもなれるものならなりたかった職業を列挙する希望の言葉もあります。
ただの無敵の獣だと思っていたひとの言葉とは思えませんでした。

池田小は子に期待し慈しみたいと思っている親が多い学校だとおもいます。

そうされたかったのされなかった守とは対極に感じました。

きっと羨ましかったんだなぁ・・・。
思いを込めて怒られたかっただろうなぁ・・・。
正面から「宅間守」として向き合って殴り合いたかったんだろうなぁ・・・。

なんだか妙に悲しくなります。
まさに親に歯向かえなかった子供の復讐ですね。




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宅間守は天性の暴力者?ー前略、殺人者たちー [読んだ漫画/本/雑誌の感想]

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以前、宅間守がおこした附属池田小事件の被害者についてのドキュメンタリーを書きました。
https://mi--ma.blog.ss-blog.jp/2021-06-23

類書として「前略、殺人者たち 週刊誌事件記者の取材ノート」を読みました。


父親を中心にした取材


守父への取材や人となり、そして父親をとおした本人の人柄について書いています。

おそらく気性の激しさは父親似なんでしょうね。
すこし父親のほうが常識があるかな?

おそらくお金に困ったり両親が極端に仲が悪かったりする家庭環境ではなかったんでしょう。
暴力があったりDVにちかい「しつけ」はあるかもしれません。

そういう時代だったでしょうし。

でも守の場合は本人の資質だったのかもしれません。

ノートに「灘高校に行きたい!」と強く思う上昇志向。
しかし素行が悪く、頭もよくない自分の現実。

周りが虫けらに思える暴力性とプライドの高さ。

理想と現実の差と暴力衝動が抑えられなかった。
どこかでせめて精神科医にかかっていれば抑えられたのかなあ・・・。

でも精神科医も万能ではないし相性もあるらしいし無理だったのかな・・・。
茨城一家殺傷事件の容疑者みたいに回復する類ではない可能性もありますよね。

こういう本人のなかにどうしようもない暴力性がすでにある場合、どうすればいいのでしょうか?

精神科医にかかったとしても親が教育しようとどうしようもない人もいます。


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52ヘルツのクジラたち-人は全部与えられ与えることから逃げられない- [読んだ漫画/本/雑誌の感想]

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52ヘルツのクジラたち / 町田そのこ




あらすじ


52ヘルツのクジラとは―他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。
たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。
そのため、世界で一番孤独だと言われている。
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる―。


世界一孤独なクジラ


クジラが発する周波数はコミュニケーションをとったり距離感をつかむためにあります。
「52ヘルツの鯨」は一般的より高いんです。

ただその音紋は同じ。

姿は確認されていなくて、他に同じ周波数がいないことも特異。
群れを成すのがクジラだから「世界でもっとも孤独な鯨」と言われています。



選んだ理由


2021年本屋大賞受賞作です。
「家族」とは大事すべきものではあるしもっとも身近な共同体です。

だからこそ悩み、離れられない永遠の問題。

人間である限り生まれやすい状況だから読んでみました。

貴瑚のなかの「他人」のなさ


貴瑚は家族という存在からムシされています。
他人という目からは貴瑚はいません。

人格形成が完了してしまった貴瑚側からも見えなくなりました。
できあがってしまうと矯正はできにくいものです。

目に入った人に愛着はあっても愛情は持てない。

他人に心を動かされたことがない。

いいことも悪いことも相互関係というのも理解できない。
だから自分の言った言葉が誰かに影響をもたらすことがわかってない。

だからアンさんの機微もわからないし気軽に軽率なことも言えちゃう。

他人の目をみた自分というものを意識できなかったのが貴瑚です。

貴瑚の親友は結構、アンさんをディスっていました。
確かに明確にアプローチはしていませんでしたしゴリ押しもしていませんでした。

でもあそこまでいくと言葉にはしていなくともわかりそうなものだけどなー。
それっぽいこと初対面で言っていたし。

人間関係は一方的になれない


「ひとというんは最初はもらう側やけんど、いずれは与える側にならないかん。(中略)親となればなおのこと」
言葉尻がつよくおばあちゃん集団のリーダーのセリフです。

「なれる」でも「なる」でもなく「ならないかん」というところが印象的でした。

人間社会は相互関係なんだと思いました。
話をすれば聞く人と話す人になり、お金は支払う人と受け取る人になる・・・。

そして受け取れる人は与え方も力加減もわかる。
わからなければ一方的になって依存体質になる。

考えさせられました。

これからのクジラ


貴瑚は最初は働く意思はありませんでした。
働いても循環性が生まれず不毛だからです。

しかしムシの存在ができて情を与えられ与える芽が生まれます。

人間は理屈のない理由や目的ができれば強い。
それが一方的なければなおさら。

きっと2年間の間にアンさんに助けられたときより強くなっているでしょう。

なにか仕事を見つけて閉鎖的ではなくなるでしょう。

和に広さは人それぞれ。
循環してさえすればいい。

ムシも話すことで扉を開いて与えられることを学ぶでしょう。
きっと吸収しまくって子犬系イケメンに育つんだろうなあ。






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堺市美術館の「豊臣秀吉と堺」に行ってきました!大坂は金のなる木!? [日記]

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大阪・堺にある堺市美術館に行きました。
「豊臣秀吉と堺」という企画展がやっていて面白かったですよ。
企画展「豊臣秀吉と堺」 <令和3年6月22日(火曜)~7月11日(日曜)>


聚楽第はただの見栄のためじゃない


聚楽第行幸図屏風をはじめとした特別な資料が展示されていました。
「聚楽第行幸」というのは2度あります。

1度目は秀吉が関白になり天皇を招待したとき。
2度目は豊臣秀次が後継者になったためお披露目したときに天皇を招いたときです。

どちらも天皇を招待しているため豪華にする必要があったんです。

写真は撮れませんでしたがお金を相当に持っていることがうかがえました。
だって、くもを金をつかって表現しているんですよ!?

金を重ねたのかな?盛り上げて雲の形にしていました。

屏風はその場にいなかった人にも秀吉の存在感を知らしめることができます。
宣伝力がある秀吉らしいかんじでした。

堺といえば?


堺は商業とものづくりの街です。
鉄砲をつくっていたので重要な場。

それは秀吉だけではなく信長の代からのようです。
ただ支配するよりは自由な場にして稼がせるほうがいいと考えたようです。

代わりに代官を置いていました。
石田三成も一時期いたようです。

また千利休がいたことにより茶道の展示がされていました。
「北野茄子茶入」がきれいでした。

茶道の道具のひとつに抹茶を入れるものがあって「茶入」といいます。
茄子のような形だから「茄子茶入」。

豊臣秀吉の家紋である桐紋がどうどうとありました。

屏風も茶入もきれいでまさに見事でした。
でも人によっては敵の持ち物。

壊されても仕方がないでしょう。
実際こわされたものもあったでしょう。

それでも残っているものは人を惹きつけるなにかがあったのかな?
少なくとも屏風は驚いたしよくできてるなー、こんなの壊せないなって思います。




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犬がいた季節/伊吹 有喜 ー大人未満子ども以上同士が交差していく物語ー

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犬がいた季節/伊吹 有喜




★第1話 めぐる潮の音
進路をめぐった家族との関係に悩む塩見優花。
家族は大事だし好き。故郷も嫌いじゃない。

でも外の世界を知りたい。
井の中の蛙になるかもしれない。
おそれと冒険心を抱きながら絵を一心に描く早瀬と交流する。

★第2話 瀬名と走った日
オートレースとりわけモートレースにハマる五月。
ひょんなことからF1に行けるチャンスにめぐまれる。

成績優秀な相羽と共通の趣味があることを知ったのがきっかけで
一緒に鈴鹿サーキットに。

友達でなくても共通の趣味があるだけで近づける男子高校生のひと夏。

★第3話 明日の行方
阪神・淡路大震災で被災した祖母と相部屋になる奈津子。
どうしようもなくつらい体験をした祖母の様子を見る。

それまで効率がいい、くいっぱぐれないことのみを考えてきたことを振り返る。

自分のことだけでなく他者とのかかわりの中で存在意義を。
したいこと、できること。

見つめなおした結果は―。

★第4話 スカーレットの夏
スナックを経営する母から逃れたい。
その一心で少女を消費していく詩乃。

心をすりつぶしそうになるものの母の真逆な未来のため。

そんな日々のなかでクラスメイト鷲尾の別の姿を知る。

距離が近づいて行く中、無理をしなくても自分を想ってくれる人がいる事を知る。

★第5話 永遠にする方法
画家志望で練習にいそしむ大輔。
体がよわった父を見舞いながら家族トラブルが発生。

おなじく家族が入院&トラブルにあう優花と過去を思い出していく。
そして初めて向き合う家族の死。

その前に自分がなにをできるのか。
自分だからこそできるなにかを大輔は見つけられたのだろうか?

★最終話 犬がいた季節
これまででてきた登場人物が高校100周年でつどう。

それぞれが自分の道を見つけ、諦めることなく進んでいっていた。
コーシローがいた季節をだれも忘れていなかった。

それは優花と早瀬もおなじ。

高校生あるある


2021年本屋大賞ノミネート作品に選ばれています。
昭和~令和までのある高校の生徒の模様を犬のコーシロー目線で見ていきます。

それぞれの流行を織り交ぜて高校生特有の複雑な気持ちを体験できます。

好きなものが一緒なだけで秒で友達になっちゃうとか。
自分のなぞの無敵感。
世界の外を知りたい気持ちとか。

めっちゃわかります。

私は平成生まれ。
第五話の平成11年度卒業生が一番ちかいかな。

そういえば当時は高校生ではありませんでしたが世紀末だのノストラダムスだの流行ってたなー。
オカルトモノ、なぜか私は好きなんです。

ビートたけし司会の番組の大槻教授と韮澤さんの対立がおもろかったです(笑)
スゴく言い合っていたけれど仲良しだったみたいですね。



だからこそ遠慮なくいいあえるのか。


タグ:本屋大賞
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近くてとおい「友人」が選んだ最期に答えなんてない [日記]

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声優の浅野真澄さんが「逝ってしまった君へ」という本を書きました。


文春オンラインでのインタビューは読みました。

浅野さんはトーク番組で軽やかにお話しされてざっくばらんな印象を持っています。
キャラクターはBLOOD-Cの網埜優花が好きです。

女子高生・刀・制服という共通点があるのみのBLOODシリーズのひとつです。


神社の娘が異形のモノとたたかうストーリーで学校の委員長役。

私もしっかり者のかっこいい声のイメージです。



長年の友人を突然亡くした喪失感。
どうにかして埋めたかった心の穴。

心境をインタビュー形式で記事になっています。

精神疾患当事者や家族のかたの本はいくつかあると思います。
友人という「第三者」は新鮮な気がします。

本はもちろん読んでみたいのですが、今回で印象的な言葉は

「あなたの人生の全貌をあなた自身は知らないんだよ」

です。

人生は多角的。

他人から影響を受けることもあるし逆もある。
どう受け取ったか、受け取られたかはお互いわからない。

多分、死ぬ瞬間もわからない。

だから自分の人格を無理に否定せず、生きていてもいいのかな。
わからないことは「わからない」というアンサーがもうある。

この言葉にすこし私も救われました。


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